藤元健太郎のフロントライン・ドット・ジェーピー

2001年1月15日月曜日

外資上陸とeビジネス

(2001年1月、米国版「Wired」の日本版「Hotwired Japan」で掲載されたコンテンツを編集しました)


幕張にフランスから世界第二位の小売り業カルフールが上陸した。電力業界では米国エンロン社が日本に上陸しようとしている。21世紀の黒船達は不景気になりそうというこの状況でもバブルの負債を抱えた国内企業を後目に日本市場を目指してくる。この市場というのは世界から見てとても美味しいマーケットに映っているようだ。それは国民が平均的に高い購買力を持ち,さらに同一人種であることから,購買行動が同質化されており,一度支持されれば一気に広がるマーケットであることも理由のひとつであろう。それは既存のサービスに必ずしも満足していない消費者がたくさんおり,決して保守的ではなく,いいものがあればすぐ新しいものに乗り換える特性を持っている。長い歴史を持つ衣料や小売り,外食産業でも絶えず,革新は起こり,既存プレーヤーは安泰ではない。
新しいプレーヤーの登場を促す要因として規制緩和と技術革新が大きな役割を果たすことはこれまでの歴史が証明している。大店法改正とともに上陸してきたトイざラスはたちまち既存玩具市場を破壊した。POSをベースにした単品管理はコンビニを小売りの覇者に押し上げた。自動車の登場とライフスタイルの変化が駅前商店街や百貨店から郊外型大型SCに顧客を移動させることを可能にした。
そして今再びチャンスは訪れようとしている。それはeビジネスという新しい武器である。カルフールの安さの源泉であるメーカーからの直接調達率は日本では卸業者の抵抗で現在は全体の約六割という状況である。これまでであればやはり日本の商慣習に屈するかと言われるところであるが,eマーケットプレイスの登場はこうした状況を激変させる可能性がある。すでにカルフールは世界の大手小売り7社が出資する電子市場「グローバルネットエクスチェンジ(GNX)」に参加しており,こうしたeマーケットプレイスの利用が広がることで,既存のノウハウをそのまま活かし,海外の市場でも調達を容易にした形での参入が可能になっていくだろう。
また電力分野における規制緩和とともに参入してきたエンロン社は発電所も建設を計画しているということでまさに今頃重厚長大産業の典型がというふうに見えるが,同時にエンロンジャパンはエンロンオンラインというエネルギーの含めた産業素材のeマーケットプレイスも併せて投入する。ここで電力需要の取引ができることで川上から川下までのバリューチェーンを握ることが可能になるわけであり,これもeビジネスがあることでより強力な参入を実現できることになる。
つまりある強いビジネスモデルを持ったプレーヤーが,新規参入する国の市場において足りない部分でeビジネスを活用できれば,これはまさに強力な参入チャンスになると言えるだろう。eビジネスの普及はこれまで流通慣行や商慣習に阻まれて参入できなかった外資にとってはまさにウェポンになろうとしているのだ。
もちろん,逆に考えれば,日本企業もeビジネスにより海外進出の機会を得ることができることも確かである。中国を始めとするアジアマーケットは何度も痛い目にあった企業も多いが,eビジネスが浸透すればいよいよ本当に上陸が実現できるかもしれない。eビジネスが特定の強いバリューをすぐに接続することを容易にしつつあるということで,強い企業はますますグローバルに展開できるチャンス増やすだろう。eビジネスの浸透は業界や業種を問わず,国際的な競争の障壁をますます低いものにすることだけは間違いない。

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