藤元健太郎のフロントライン・ドット・ジェーピー

2010年1月20日水曜日

日経ネットのコラム「ビジネス活性化へ向け、ID管理の基盤整備を」寄稿しました

日経ネット/デジタルコアのコラムネット時評で「ビジネス活性化へ向け、ID管理の基盤整備を」を寄稿しました。
久々の日経ネットですので,IT業界の活性化の政策提言をしています。概要は民間ベースで実名とIDのリンケージを管理するプラットフォーム事業者を制度化し,多様なIDの発行を可能にし,ベンチャー企業でも個人情報をきにしないでビジネスができる環境を作るべきだという提言です。位置情報やライフログの活用がますます広がる中で産業発展のためには重要な仕組みだと考えています。

2010年1月18日月曜日

求められる新しい社会システム「IDマネジメントアーキテクチャ」の提言 経済活性化につながる新しいビジネス基盤

(2010年1月日本経済新聞電子版の「ネット時評」に掲載されたコンテンツを編集しました)

高まる利用者ID利用ニーズ

民主党政権になり,再び納税者番号制度の議論が始まっている。住基ネットでも個人を特定することが可能な番号管理については激しい議論が生まれた。特定個人をユニークな番号で管理されることに対する恐怖感は依然として大きいものがある。
また個人情報保護法の施行後も企業からの個人情報流出問題も多く発生しており,生活者の方に個人情報を企業に預けることに対しても神経を使う人は増えている。事業者サイドから見たときには現在の個人情報保護法はB2Cビジネスを行う事業者にとっては対策コストが非常に負担になっている。さらに青少年を保護するために18歳未満かどうかの本人確認を義務づけるような制度も増えており,企業側の管理コストはますます増えていく傾向にある。しかし,ビジネスの現場では免許証をコピーするなどの方法で本人確認や所在確認をしているサービスも少なくないが,見ず知らずのアルバイト店員に自分の免許証を開示しなければ行けないというリスクもあれば,最近の若者は車に乗らない,海外旅行しないという傾向もあるので免許証を持っていない,パスポートも持っていない人も多く,自分を証明する手段自体が限られるという状況も生まれており,もっと簡便にビジネスができる仕組みが望まれている。
さらに技術革新や新しいサービスの普及による新しい個人情報の概念も生まれつつある。ライフログと呼ばれるものはこれまでの静的な個人情報だけでなく,ネット上での行動情報(アクセスログ,日記,閲覧コンテンツ,購買行動など)が時系列で蓄積されることで個人の生活の多くが情報として活用しようという概念であるが,すでにネットサービスなど中心に多くの事業者に貯まりはじめている。
さらに携帯電話やスマートフォンの位置情報機能が手軽に使えるようになったことで,自分の居場所や移動履歴などを事業者やサービス利用者などに伝えることがとても容易なり,場所の情報を活用した新しいサービスが多数生まれようとしている。
しかし,デジタルコミュニケーションの発達によりこれまで個人情報の中心的存在であった「氏名,住所,電話番号」というデータを必要としないでビジネスを実現できるケースも増えており,ビジネスで個人を特定するIDと実社会における実名とは必ずしも紐づける必要が必ずしもなくなりつつある。Eコマースの世界では
メールが届き,決済と物流さえ機能すればビジネスは成り立つ。コンテンツビジネスであればさらに物流もいらないので住所情報も必要無い。個人間でもそうしたケースが生まれている。例えば大手SNSサイトmixiでは日本郵政と組み,年賀状サービスを展開しているが,これは年賀状を出す相手の住所を知らなくて紙の年賀状を相手に届けることができるサービスである。mixi上で自分のマイミクであればIDだけで年賀状を受ける側が自分の住所をmixiと日本郵政に伝えることで年賀状を出すことができる。

行動マーケティングとマルチパーソナリティ化
このように実際にネットサービスの中では「ハンドルネーム」などの形で仮名の利用が増えている。しかし,前述のmixiのように仮名で知り合った人とは仮名のまま交流しても通常ほとんど問題が無い。オフ会などで実際に合った場合でも実名は名乗らない人も存在する。女性などは実名とそれに紐尽く住所,電話番号などはストーカー被害などが増える中で極力他人には流通させたくないというニーズも強い。従来のマーケティングは個人の属性情報をなるべく詳細に知ることで,個人のニーズを推測するというアプローチが一般的であった。しかし,実際の行動情報が捕捉できればその推測するという範囲は非常に限定される。今や30歳,男性,独身,東京在住,公務員という情報だけでセグメント化しても,その人のライフスタイルを読み取ることは難しい。それよりも年齢も性別も職業もわからないが,毎日商品にアクセスしてくる人と,ここ半年アクセスしてない人とで分けた方がより購買に繋がるマーケティングが可能になる。グーグルの急成長を支えたのは,「今その情報を知りたがっている人」を捕捉できる仕組みであり,その人にリアルタイムに広告を出せることが何よりも大きな価値である。こうした行動情報を管理する時にはユニークなIDさえわかればよい。さらにそのIDの範囲は限定的でよい。現在のアマゾンのサービスの弱点は一つのIDの購買履歴を全て活用したリコメンドをするために,仕事と趣味と子供のために行動したデータを全て同一人物と見なしてリコメンドするために,リコメンドする商品がぐちゃぐちゃになってしまうことがある。一人の人間でも,その人の活動のシーン毎にニーズや価値観や金銭感覚も変わるものであり,むしろ行動マーケティング的にはその特定のパーソナリティ単位で行動が捕捉できた方が有効なマーケティングにつながる。今後位置情報が行動情報に加わるのであれば,場所という概念も重要である。例えば昼間新宿にショッピングに訪れた女性は自分の行動情報を提供することで買い物に役立ち,お得になる情報が入手できるのであれば時間と場所限定で情報を提供することも許可してくれるかも知れない。歌舞伎町の夜の男性であればなおさら,自分の好みのキャバクラを教えてくれるための行動情報は次の日の昼間には消し去られていることを希望する人も多いに違いない。
このように行動情報の活用は特定個人単位ではなく,あくまでもパーソナリティと利用シーンによって範囲を限定化することができることが事業者側にとっても利用者側にとっても望ましい。

個人情報信託管理制度の提案
このように多様なID管理のニーズが出てくる中で,現在の仕組みのままではそれを実現することは個々の企業に対して膨大な負担をかけることになる。そのためIDの管理をレイヤー構造化したモデルに組み替え,レイヤー毎の管理レベルを変えることで今後の全てのビジネスのベースになるぐらいの社会システムを構築できるのではと筆者は考えている。現在もOpneIDなど事業者間の相互与信のような形でIDを運用するモデルもあるが,利用者が多数のIDを発行しないで済むというメリット以上のものを出せてなく,前述のようなニーズには対応できない。また知識経済とも言われるこれからの新しいパラダイムの中では,金融資産と同じくらい知識情報も資産として捉える必要が出てくると考えられ,今後のサービスの高度化の中で当然リテラシーの低い人達への対応も必要になる。現在金融サービスにおいて,プロが一定の資格や制度のもとで資産を預かり運用する仕組みがあるように,個人の知識資産の管理を第三者に委ねる制度もあわせて必要になるだろう。自分の個人情報のサービス毎の開示範囲の設定などを自分で行うか,第三者に委託するのかも選択できることが望ましい。以上から筆者の考えるビジネスアーキテクチャを提案したい。

図表 IDマネージメントのアーキテクチャ



まずもっとも身分確認が可能なレベルを担う事業者を個人情報信託業とし,IDの発行と他のサービスからの本人確認を担うことを可能にすることでサービス事業者はこの事業者からIDを発行してもらい,それを利用するだけでビジネスができるため,個人情報保護法の適用は除外され投資コストは少なくてすむようになる。IDIDの紐付けは個人情報信託業しかできないため,サービス間での同一人物特定は利用者の許可が無くては難しい。また利用者側も自分の個人情報を明かさないで利用できるため,プライバシーに気を遣うようなサービス(ヘルスケア,アダルトなど)のビジネス活性化がさらに期待できる。また個人情報信託業はエージェントサービスとして個人情報を第三者企業へ適切に開示することを代行したり,サポートしてくれるような新サービスを行うことも期待できる。引き続き個人がオープンに開示するニックネームなどはサービス事業者レベルで必要な範囲で運用されればよいだろう。
この個人情報信託業に参入できる企業のイメージとしては携帯電話などの通信事業者,クレジットカード事業者,大手ネットサービス事業者などがあげられるが,これらの事業者の責任範囲は大きいため許認可制度もしくはそれに近い高いハードルを設ける必要があるだろう。

まずはこうした仕組みを先行してネットサービスレベルで運用し,リアルなビジネスでも利用可能にすることで新しいサービスのイノベーションが期待できる。こうした利用が一般的になれば,公的サービスもこうしたサービスを活用することができ,納税者番号制度などもスムーズに適用できるはずである。制度設計につながる議論が始まることを期待したい。

2010年1月6日水曜日

位置情報活用Twitterアプリ「ランブリン(ramblin)」リリース!

私が手伝っているを関心空間社の新しいiアプリサービス「ランブリン(ramblin)」がリリースされました。ランブリンは位置情報を活用し,自分がいる場所のお店やスポットなどを対象につぶやくことができ,利用者は特にフォローしているかどうかは関係無く,自分のまわりやお店の情報についてのつぶやきを見ることができます。メインのTwitterクラアイントにするにはもう少し改善が必要な部分ありますが,やはり自分がいる場所の近くのつぶやきが見られたり,お店に対してニコニコ動画みたいな非同期なコミュニケーションができるのは楽しいですよ!有料(¥350)なんですけどね。。。(^_^;)
以前にご紹介した渋谷で実験中の「ピナクリ(pinaclip)」は渋谷にいる人を前提にAR機能なども実装し実験していますが,ランブリンはもう少しTwitterとの連携を前提に全国どこでも使えますので是非お試し下さい。iTunesストアはこちら。今ソーシャルネットのカテゴリーで4位ですね。